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【平成30年史 変容する犯罪(3)】電話1本…ヤミ金撲滅が生んだ「オレオレ」 挫折エリートが詐欺を効率化 アジトには水溶液入りバケツ

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【平成30年史 変容する犯罪(3)】
電話1本…ヤミ金撲滅が生んだ「オレオレ」 挫折エリートが詐欺を効率化 アジトには水溶液入りバケツ

特殊詐欺の被害額の推移 特殊詐欺の被害額の推移

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 「特殊詐欺のルーツはヤミ金融にある。五菱会の事件後、多くのヤミ金融業者が特殊詐欺にくら替えした」

 こう断言する男も元来、ヤミ金融を商売にしていた。男のグループは、ピーク時には店舗数300店、従業員は1300人を数えた。多重債務者らに、1週間で50%、10日で75%-という高金利で金を貸し付けて暴利を貪(むさぼ)っていた。

 従業員は、貸付残高と回収率に応じてランク分けし、成績上位者には億単位の報酬を支払うこともあり、自身も、「月収は最低でも2億から3億円くらいあった」という。

 ある日、男の部下が電話1本で、架空の貸付金の詐取に成功した。グループ内ではこの「新たなシノギ」が瞬く間に広まった。

 「ヤミ金融の三種の神器は、電話と名簿と口座。それに弁が立つやつがいれば、確実に利益を上げられる。それは特殊詐欺も同じだ」

 男は“業容”を拡大しても、新たな獲物探しに余念がなかった。ヤミ金融で使う多重債務者名簿のほか、通販会社や健康食品会社の顧客名簿など、あらゆる個人情報を収集した。

 正業を持つ身となり、「今は足を洗った」と笑う男に良心の呵責(かしゃく)はないか、と問うた。すると男は「まったく」と笑って続けた。

 「無知な人間を搾取するっていうやり方は、これまで一部の特別な階層にいる連中が散々やってきたこと。それを俺たちもやってるだけなんですよ」

                  

 挫折エリートが詐欺を効率化

 「『情』と『恥』。日本の社会を形作る、この2つの心根につけ込む犯罪だからだ」

 なぜ、特殊詐欺はこれほどまでに蔓延(まんえん)したのか。

 その問いに対する元捜査員の答えだ。

 数々の経済事件の現場を経験した元捜査員は、2000年代に突如出現した「新型犯罪」が瞬く間に日本社会を侵食するさまを目の当たりにしてきた。

 「子を思う親の情。身内や自分の恥を周囲に知られたくないという心理。詐欺グループはそこを巧みに突いてくる」

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 続発する被害に捜査サイドも手をこまねいていたわけではない。

 警察庁は平成16年、同庁幹部を筆頭にする緊急対策チームを設置。17年には、首都圏の拠点に全国の警察から捜査員を集めて、「振り込め詐欺」の専従班を発足させるなどさまざまな対策を講じてきた。

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