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【平成30年史 変容する犯罪(2)】地下鉄サリン事件 謎解明阻んだキーマンの死 オウムの呪縛まだ解けず

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【平成30年史 変容する犯罪(2)】
地下鉄サリン事件 謎解明阻んだキーマンの死 オウムの呪縛まだ解けず

オウム真理教による主な事件 オウム真理教による主な事件

 村井元幹部は2日後、不可解な死を遂げる。東京・南青山の東京総本部前で待ち伏せた29歳(当時)の男に、右腹と左腕を刃渡り21センチの洋包丁で刺されるのだ。男は指定暴力団山口組系の組員。だが、公判でも男の動機が明らかにならず、判決理由で裁判長は「犯行の背後関係は、いまだ解明し尽くされておらず、不透明な点が残る」と指摘した。

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 村井元幹部の死は、オウム事件の捜査にも大きな影響を与えた。

 「村井元幹部が殺されたことで事件のすべてを知るのは麻原死刑囚しかいなくなった」

 当時、警視庁捜査1課でオウム事件の捜査に携わった元捜査員はこう述懐し、唇をかんだ。

 オウムは、事件で使われたサリンやVXなどの毒物以外にも銃器や覚醒剤も密造していたことが警視庁の捜査で判明する。巨額資金を持つ組織が銃器、覚醒剤に興味を持てば、暴力団が資金源として目をつけると考えるのは自然だ。

 「教団の武装化には暴力団が絡んでいる可能性が高かった。村井元幹部が暴力団との折衝にあたっていたとの見方もあったが、解明できずに終わった」

 サリン事件の中心的役割を担っていた死刑囚の取り調べを担当した元捜査員は、取調室で発した言葉を鮮明に覚えている。

 「『すべての指示を出していたのは村井(元幹部)』。麻原死刑囚を守るための方便だったのかもしれないが、村井元幹部が死んだ今となっては真偽を確かめることはできない」

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 27年2月28日。元捜査員約30人がささやかな酒席を囲んでいた。一連のオウム事件に警視庁が本格捜査に乗り出したきっかけとなった目黒公証役場事務長逮捕監禁致死事件の発生から20年にあたる日だった。

 席上、当時の捜査幹部は「オウムは70トンのサリンを精製して、山梨の敷地にあったソ連製のヘリコプターで山手線の内側に散布する計画だった。もし実行されていたら、われわれはいまここにいない」と語った。

 オウムへの強制捜査で計画を未然に防いだともとれるが、宗教を隠れみのにした凶悪なテロ組織の肥大化を見過ごしてきた側面も否めない。首都・東京は3年後に五輪・パラリンピックを控え、テロの脅威が改めて高まっている。

 「オウムとは何だったのか。そして暴力団との関係はどうだったのか。解明できていない謎は残っている。こうした謎を解くことが新たなテロの防止にもつながるはずだ」。オウム事件を捜査した警視庁OBは指摘する。

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