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【震災真論・深論】おばちゃんの技は「宝物」 何としても雇用守る マルハニチロ石巻・工場長の奔走

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【震災真論・深論】
おばちゃんの技は「宝物」 何としても雇用守る マルハニチロ石巻・工場長の奔走

現地再建されたマルハニチロ新石巻工場。今年4月に操業を始めた。設備は最新鋭に変わってもおばちゃん従業員は変わらない=15日、宮城県石巻市 (川村寧撮影) 現地再建されたマルハニチロ新石巻工場。今年4月に操業を始めた。設備は最新鋭に変わってもおばちゃん従業員は変わらない=15日、宮城県石巻市 (川村寧撮影)

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 震災の日、200人が出勤していた。津波が押し寄せ、全員で裏山に逃げた。工場に家と車が突き刺さるのが見えた。火災が起き、一面火の海に。夜空を焦がす赤を背に工場のシルエットが黒く浮かんでいた。

 山口は震災2カ月後、従業員に引き続き働く意思があるのかどうかの聞き取りをした。250人が「イエス」と答える。誰もが生きていくお金が必要だった。

 生活資金の足しにしてもらおうと、従業員を形式的に退職扱いにして退職金を支払い、改めて雇用契約を結んだ。被災を免れたラインの復旧を急ぎ、150人を石巻工場、100人を他工場に振り向けた。

 震災4カ月後、仮復旧の日を迎えた。

 おばちゃんたちが集まってくる。

 身内を亡くした人がいる。家を流され、避難所から来た人もいる。

 「だいぶ休んだから体なまってるよ」

 やせ我慢。軽口をたたいて心痛を押し殺している。

 記念にと、工場の前で集合写真を撮った。

 石巻工場の女性従業員の熟練度は全国の直営工場の中でトップ級といわれる。他工場に先駆けて生産性改善活動に取り組み、震災前は全国1位の利益率を上げていた。

 「高いスキルを持つ彼女たちはわが社の宝です。新しい従業員に一から仕事を教えたとしても、あのレベルに引き上げるには何年もかかります。彼女たちを手放すのは損失。現地再建が最善の道です」

 山口は本社の説得を試みた。情には訴えない。生産性の高さと採算性を客観的にアピールする。

 おばちゃんたちも立ち上がった。被災工場で復旧したラインは1本。稼働時間をそれまでの1日14時間から18時間に増やし、震災前の2倍の利益率をたたき出した。

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