産経ニュース

【震災真論・深論】おばちゃんの技は「宝物」 何としても雇用守る マルハニチロ石巻・工場長の奔走

ニュース 社会

記事詳細

更新

【震災真論・深論】
おばちゃんの技は「宝物」 何としても雇用守る マルハニチロ石巻・工場長の奔走

現地再建されたマルハニチロ新石巻工場。今年4月に操業を始めた。設備は最新鋭に変わってもおばちゃん従業員は変わらない=15日、宮城県石巻市 (川村寧撮影) 現地再建されたマルハニチロ新石巻工場。今年4月に操業を始めた。設備は最新鋭に変わってもおばちゃん従業員は変わらない=15日、宮城県石巻市 (川村寧撮影)

 「三度目の正直」も実らなかったと聞き、マルハニチロ石巻工場(宮城県石巻市)の工場長(当時)、山口龍一(59)はがっくりきていた。

 平成25年冬。

 同社は東日本大震災で被災した工場の現地再建に向け、国庫補助金の交付を申請していた。申請は3回目。国は1、2回目に続き、首を縦に振らなかった。

 補助金交付には再建を目指す被災地の各企業から申し込みが殺到していた。国は資金力の乏しい中小企業を優先させ、大手企業を後回しにした。補助率は3分の1。水産業界最大手とはいえ、公的資金に頼らない自力再建は難しい。

 撤退。

 石巻市に進出して70年近く。地元で「ニチロさん」と親しまれた歴史に終止符を打つ漢字2文字が山口の脳裏をかすめた。

 本社も閉鎖に傾いていた。補助金の見通しが立たないばかりではない。従業員が被災し、労働力確保が厳しい。巨大消費地の首都圏近くに立地した方がコスト削減につながる。現地再建に踏みとどまる理由を見いだすことが困難になっていた。

 折しも、同様に被災した業界大手の日本水産が女川工場(同県女川町)を畳む決定をしていた。ニチレイも気仙沼工場(同県気仙沼市)の閉鎖を発表。マルハニチロが追随してもおかしくない情勢だった。

 山口は気を晴らそうと、工場の見回りに出た。

 工場は石巻港の目と鼻の先にある。津波で3棟のうち2棟が使い物にならなくなり、残る1棟で細々と操業を続けていた。

 白の作業着の女性従業員がラインに並び、冷凍食品をトレーに詰める作業をしている。地元採用のおばちゃんたちだ。労働力の主力を担う。

 何人かと目が合う。

 〈この先どうなるの?〉

 瞳が問い掛けている。マスクで顔は見えないが、不安がっているのは目で分かる。

続きを読む

「ニュース」のランキング