神奈川県警5署が捜索関与も最悪事態防げず 「感度を磨くしか」再発防止へ模索

座間9遺体
片瀬江ノ島駅。近くの公衆トイレから犠牲者の携帯電話が見つかっていた=藤沢市(内藤怜央撮影)

 神奈川県座間市内のアパートから9人の切断遺体が見つかった事件では、県内在住の男女3人に加え、他県警に行方不明者届が出ていた女子高校生2人の計5人について、神奈川県警が捜索に当たっていた。関与した警察署は座間署など5署にのぼるが、いずれも有力な手がかりは得られず、最悪の事態を防ぐことはできなかった。遺体発見から30日で1カ月。県警は史上まれにみる猟奇事件が県内で起きたという結果を重大視する一方、再発防止に向けては模索が続いている。(河野光汰)

携帯電話発見も…

 県警が関わった5人の捜索の経緯は、こうだ。

 事件の最初の犠牲者とみられる厚木市の女性(21)は、8月20日夕方ごろから21日にかけて失踪し、その数日後に藤沢市の小田急線片瀬江ノ島駅近くの公衆トイレ内で携帯電話が見つかっており、個体番号などから女性のものと判明。家族から行方不明者届が出された厚木署や、藤沢署がトイレ周辺の防犯カメラの解析などを進めたが、手がかりはつかめなかった。

 横須賀市の男性(20)の行方不明者届が浦賀署に出されたのは、9月1日。携帯電話の位置情報が海老名駅周辺で確認され、同署員が約20人態勢で捜した。10月18日に行方不明者届が出された横浜市都筑区の女性(25)は、都筑署がJR新横浜駅近くの女性のアルバイト先周辺を捜索。だがいずれもその後の足取りはつかめなかった。

 捜査関係者によると、福島県警からは9月28日、埼玉県警からは10月2日に、それぞれ「管内に住む女子高校生がいなくなり、携帯電話の電波が座間市付近で途絶えている」と連絡が入った。座間署が専従班を組み、電波を受信した基地局の周辺などを捜索したが、見つからなかった。

“点”つながらず

 実は2人の電波を受信したのは同一の基地局で、現場アパートからは約30メートルの距離だった。わずか5日ほどの間に女子高校生2人の行方が同じ地域で分からなくなっていたことになり、県警幹部は「何かもう少しできることはなかったか、という思いはある。感度のようなものが足りなかったといわれれば、そうかもしれない」と打ち明ける。

 この基地局の位置情報が示すエリアは半径数キロメートルに及ぶといい、そのため周辺の民家などの戸別訪問は「当てもなくまわるには数が膨大」(県警幹部)として、行わなかった。

 捜索に二の足を踏ませたのは、5人の大半が周囲に自殺をほのめかしていたという事情もある。直ちに事件性があるとはみなされず、各署は5人を自殺の恐れなどがある「特異行方不明者」として捜索に当たっていた。

 警察庁などによると、平成28年の全国の行方不明者は約8万5千人で、うち約5万6千人が特異行方不明者に指定されていたが、結果的に犯罪に巻き込まれていたことが判明したケースは1パーセントにも満たなかった。県警幹部は県内の行方不明者についても「大半は1日足らずで見つかるか、自ら帰ってくる。自殺の可能性がある場合を含め、継続的に人手を割けるほどの人的余裕はない」と話す。

疑惑の書き置き

 これまでのところ、県警内で具体的な再発防止策はあがってきていない。

 殺人容疑などで逮捕された白石隆浩容疑者(27)は、短文投稿サイト「ツイッター」などを通じて自殺願望のある人と接触していた。

 仮に今回のように事件発覚前に被害者の携帯電話を見つけられたとしても、インターネットの利用状況などを詳細に確認するためには裁判所から令状を取得する必要があり、「自殺の可能性があるケースに対して、そこまでできるかどうか」(捜査関係者)。県警サイバー犯罪対策課では事件前から、インターネット上で自殺を示唆する書き込みを発見した場合、投稿者の居住地などを所轄署に知らせているが、「今後、何ができるかはまだ分からない」とする。

 そもそも、厚木市の女性については、失踪前に家族宛てに「家出をしますが自殺は絶対にしません」などとする書き置きを残していたが、これは白石容疑者が捜索の目を逃れるために女性に作成を指示した疑いが浮上している。単なる家出を装われた場合、見抜くことは困難とみられる。

 県警の斉藤実本部長は事件後の会見で「このような事件は二度と起きてはならない。組織的対応を徹底したい」と述べた。手探りの状況は、なお続いている。

■座間9人遺体事件 座間市緑ケ丘のアパートの一室で10月30日、女子高校生3人を含む15~26歳の女性8人、男性1人の切断遺体が見つかった事件。警視庁は同31日、うち1人の死体遺棄容疑でこの部屋に住む無職、白石隆浩容疑者を逮捕。11月20日に1人の殺人容疑で再逮捕した。白石容疑者は「9人を殺害して遺棄した」などと供述。同庁高尾署捜査本部が裏付けを進めている。